敷石道を蹴立てる
靴音のその音波で、靄はうらうらと溶けていった。
朝靄のなかから
靴音がして、霜ふりとカーキー色の職工服が三々五々現れては、また靄のなかに消えてゆく。
詳しくいえば十月一日の午後三時ごろのことだったが、青年探偵帆村荘六は銀座の鋪道の上を、
靴音も軽く歩いていた。
コンクリートの通路のうえを、コツコツと
靴音をひびかせながらポイと講堂の扉をあけて、なかに這入っていった。
所がその
靴音が、日かげの絶えた、寒い教室の外に止まって、やがて扉が開かれると、——ああ、自分はこう云う中にも、歴々とその時の光景が眼に浮んでいる。
靴音は彼の房の前まで來て立ちどまり、やがて、扉があいた。
村中濕りかへつて巡査の
靴音と佩劍の響が、日一日、人々の心に言ひ難き不安を傳へた。