剣術できたえた岩のような身体、若々しい
音声、端然たる姿。
音声一途に憑る外ない不文の発想が、どう言ふ訣で、当座に消滅しないで、永く保存せられ、文学意識を分化するに到つたのであらう。
口の先きで喋べる我々はその底力のある
音声を聞くと、自分の饒舌が如何にも薄ッぺらで目方がないのを恥かしく思った。
本草綱目に、蚯蚓は一名歌女といい、地中に長吟して鳴くとあるところから、これを飲めば
音声をよくするという口碑によって、ミミズ酒という奇想が生まれたのであろう。
寡黙で、無愛想で、時に皮肉でさへある彼は、その風貌の異教徒的な凄味と、その態度、
音声のもつ特殊な無頼性とを意識的にうまく利用してゐるやうであつた。
この表情は、
音声として耳に愬へるものと、俳優の顔面姿態によつて眼に愬へるものとがある。
少しも眠れなかったごとく思われたけれど、一睡の夢の間にも、豪雨の
音声におびえていたのだから、もとより夢か現かの差別は判らないのである。
枕許の雑音が、だん/\遠のくと同時に、それが快い微妙な、小鳥の囀か何かのように、意味もない
音声に変ってしまって居た。