これあげる、
そつちの三百円私にちようだい、と言つて五百円と三百円を交換して、おやすみ、と言つて布団をかぶつてねてしまつたさうだ。
「道」はちかごろ注目すべき作品には違ひないけれども、率直に云つて、私は、今、かういふものは
そつとしておきたいのである。
しかし、変なもので、俳優が、此の作者の意見を知つてからといふもの、何となく、
そつちの方に引つ張られてゐる気持がはつきり私に感じられた。
都ホテルのバルコニイで、何々婦人会が
そつ歯を並べ、何条通りかのカフエエで、高等学校の生徒がプロレタリア文学を論じてゐた。
「ううん、手紙の封をするのだ」と言へど、茂索、中中承知せず「あとで
そつと食ふ気だらう」と言ふ。
斯うしてゐては駄目だ、彼はさう思つて又むつくり起き上つて、妻の傍にひき
そつて子供に近づいて見た。