が、被害者に就いては、
一向に見覚えがない旨を附加えた。
ところが、このわたくしは、そういう賢明人種とはちがい、至って生来無慾恬淡の方であるからして、なにごとも構わずぶちまけて、
一向に憚らない次第である。
この話が拡ると湖畔には大勢の見物人が寄ってきて、再び巨獣の現れるのを待ったそうだが、どうしたものかその後
一向に姿をあらわさないという。
実は、この甲野八十助は探偵小説家に籍を置いてはいるものの、
一向に栄えない万年新進作家だった。
私たちの
一向に気のない事は——はれて雀のものがたり——そらで嵐雪の句は知っていても、今朝も囀った、と心に留めるほどではなかった。
だが、老いたる観相家は、奇怪なことにもきょとんとしたまま、
一向に返事をしなかったので、不審に思いながらよくよく見ると、返事のなかったのも無理からぬ事です。
などと頻りに小言を云うけれど、その実母も民子をば非常に可愛がって居るのだから、
一向に小言がきかない。
親父は眞赤になつて怒つた、店にあるだけの櫻の木の皮を剥せ(な脱カ)ければ承知しないと力味で見たが、さて
一向に效果がない。