陳は受話器を
元の位置に戻すと、なぜか顔を曇らせながら、肥った指に燐寸を摺って、啣えていた葉巻を吸い始めた。
もし万一途中で断れたと致しましたら、折角ここへまでのぼって来たこの肝腎な自分までも、
元の地獄へ逆落しに落ちてしまわなければなりません。
元浅野内匠頭家来、当時細川家に御預り中の大石内蔵助良雄は、その障子を後にして、端然と膝を重ねたまま、さっきから書見に余念がない。
が、間もなく「新思潮」が廃刊すると共に、自分は又
元の通り文壇とは縁のない人間になってしまった。
信子はしかしそれに気がつくと、必話頭を転換して、すぐに又
元の通り妹にも口をきかせようとした。
さる程に三年あまりの年月は、流るるやうにすぎたに由つて、「ろおれんぞ」はやがて
元服もすべき時節となつた。
若者は名は杜子春といつて、
元は金持の息子でしたが、今は財産を費ひ尽して、その日の暮しにも困る位、憐な身分になつてゐるのです。