戯奴の紅き上衣に
埃の香かすかにしみて春はくれにけり
が、ワルシャワの市街は、どんなであったろう! イワノウィッチは、最初ワルシャワを、煤煙と
埃と軍隊との街だと思っていた。
その窓にはいつ水をやったか、花の乏しい天竺葵が、薄い
埃をかぶっている。
そのまた
埃じみた硝子戸の外はちょうど柳の新芽をふいた汽車の踏み切りになっていた。
ここも紫檀の椅子机が、清らかに並べてありながら、冷たい
埃の臭いがする、——やはり荒廃の気が鋪甎の上に、漂っているとでも言いそうなのです。
春
埃の路は、時どき調馬師に牽かれた馬が閑雅な歩みを運んでいた。
埃じみたカツフエの壁には「親子丼」だの「カツレツ」だのと云ふ紙札が何枚も貼つてあつた。
暖簾の色、車の行きかひ、人形芝居の遠い三味線の音——すべてがうす明い、もの静な冬の昼を、橋の擬宝珠に置く町の
埃も、動かさない位、ひつそりと守つてゐる……
壁紙の剥げかかつた部屋の隅には、毛布のはみ出した籐の寝台が、
埃臭さうな帷を垂らしてゐた。