蒲原氏は死ななかつたし、もともと死ぬ気配の
微塵もない人物だから、蒲原夫人も秋蘭も病的な神経の取越苦労に大笑ひして、一つの笑ひ話としか考へなかつた。
辛酸万苦して飛躍を重ねた論理も、誠実無類な生き方を伴はなければ忽ち本拠を失つて、傲然自恃の怪力も
微塵に砕け散る惨状を呈してしまふ。
微塵棒を縦にして、前歯でへし折って噛りながら、縁台の前へにょっきりと、吹矢が当って出たような福助頭に向う顱巻。
したがって彼は、神様からもその悪意や暗いところの
微塵もないからりとした性質を愛でられていた。
香ひの流れといふものが眼に見えるなら、どんなに
微塵の感情が泳いでゐるか色に現れるであらう、あの金粉酒のやうに。
円髷に結ひたる四十ばかりの小く痩せて色白き女の、茶
微塵の糸織の小袖に黒の奉書紬の紋付の羽織着たるは、この家の内儀なるべし。
従って、おかんが死際に、耳にした一家の人々の愁嘆の声に、
微塵虚偽や作為の分子は、交って居ない訳だった。
だから反言や、風刺や、暴露の
微塵もないこの作が甘く見えるのはもっともである。