一たび製紙所に入りて直にまた本流に合する一
渠あり。
この通は、
渠が生れた町とは大分間が離れているから、軒を並べた両側の家に、別に知己の顔も見えぬ。
古来いふ佳人は薄命なり、と、蓋し社会が
渠をして薄命ならしむるのみ。
然れども彼の面の醜なるを恥ぢずして、却つてこれを誇る者、
渠等は男性を蔑視するなり、呵す、常に芸娼妓矢場女等教育なき美人を罵る処の、教育ある醜面の淑女を呵す。
医学士はと、ふと見れば、
渠は露ほどの感情をも動かしおらざるもののごとく、虚心に平然たる状露われて、椅子に坐りたるは室内にただ
渠のみなり。
御者はやがて馬の足掻きを緩め、
渠に先を越させぬまでに徐々として進行しつ。