焼けだされた当座はとにかくやがて
壕生活も板につけば忽ち悠々たる日常性をとりもどしてしまふ。
彼は
壕から何かふところへ入れて出て来て、私の家へ一緒に向ふ途中、あんたにだけ見せてあげるよ、と言つて焼跡の草むらへ腰を下して、とりだしたのは猥画であつた。
「備へあれば憂なし」と云ふけれども、家財道具を運び出し、待避
壕を掘り、形式的な防空訓練を繰返すばかりが備へではないのである。
公園の大きな空
壕の中や、劇場や地下室の中で、何千という人たちが一かたまり折り重なって私の目の前でまだいぶっていたね。
焼けだされた当座はとにかくやがて
壕生活も板につけば忽ち悠々たる日常性をとりもどしてしまう。
「……
壕舎ばかりの隣組が七軒、一軒当り二千円宛出し合うて牛を一頭……いやなに密殺して闇市へ売却するが肚でがしてね。