が、
稀には彼自身も少年のいることを忘れたように帽子屋の飾り窓などを眺めている。
勿論日が暮れてから、厩橋向うの本宅を抜けて来る事も
稀ではなかった。
南蛮寺の堂内へはただ見慣れぬ磔仏を見物に来るものも
稀ではない。
のみならずいくら本を読んでも、寝つかれないことさえ
稀ではない。
御親子の間がらでありながら、大殿様と若殿様との間くらい、御容子から御性質まで、うらうえなのも
稀でございましょう。
更に進んで、第三者のみに現れたドッペルゲンゲルの例を尋ねますと、これもまた決して
稀ではございません。
さきほどの客のように抓って見たところで、ごく
稀にしか悲鳴を発しないのである。
だから彼女は在学中も、彼と一しよに展覧会や音楽会へ行く事が
稀ではなかつた。
さうして彼等の払つて行く金が、
稀に約束の額より多かつた時は、たつた一人の父親を、一杯でも余計好きな酒に飽かせてやる事を楽しみにしてゐた。
しかし
稀に夢の中では、暗黒に蠢く怪物や、見えない手の揮ふ剣の光が、もう一度彼を殺伐な争闘の心につれて行つた。