人の気配のさらに無い山路に尨大な孤独を噛みしめながら、谷風に送られて
縹渺と喘ぐことを、凡太はむしろ好んでゐた。
「是は武蔵の国隅田川の渡し守にて候」と云ふ宝生新氏の詞と共に、天さかる鄙の大川の
縹渺と目の前に浮び上がる所は如何にも静かに出来上がつてゐる。
森山君は、
縹渺たる感懐をリリカルな思考に托してゐる。
森山君は、
縹渺たる感懐をリリカルな思考に托してゐる。
わずか数浬の遠さに過ぎない水平線を見て、『空と海とのたゆたいに』などと言って
縹渺とした無限感を起こしてしまうなんぞはコロンブス以前だ。
人々は寒さにふるへ、しかしなにか
縹渺としたおもひを誘はれながら、屋鳴りをさせて遠く吹き拔ける風の行方にぢつと耳を傾ける。
晝間はいぶせき茅屋も、梅花にうづもれて、夜色の中に
縹渺たるさま、えも言はず。
利根川の下流、霞ヶ浦の末と相會する處、十六島は今ひとつに成りたれども、水路縱横、烟霞
縹渺、白帆相望み、漁歌相答へ、名たゝる三社、屹として水※に鼎立す。
晝間はいぶせき茅屋も、梅花にうづもれて、夜色の中に
縹渺たるさま、えも言はず。