殊に人工の文明の中に
かすかに息づいている自然を愛した。
しかも彼等の頭の上には、——ラマ教の寺院の塔の上には
かすかに蒼ざめた太陽が一つ、ラッサを取り巻いた峯々の雪をぼんやりかがやかせているのである。
そのあとには唯凍て切った道に彼等のどちらかが捨てて行った「ゴルデン・バット」の吸い殻が一本、
かすかに青い一すじの煙を細ぼそと立てているばかりだった。
やや長めな揉み上げの毛が、
かすかに耳の根をぼかしたのも見える。
額の捲き毛、
かすかな頬紅、それから地味な青磁色の半襟。
水際の蘆の間には、大方蟹の棲家であろう、いくつも円い穴があって、そこへ波が当る度に、たぶりと云う
かすかな音が聞えた。
が、やがて竹の筒を台にした古風なランプに火が燈ると、人間らしい気息の通う世界は、たちまちその
かすかな光に照される私の周囲だけに縮まってしまった。
私は
かすかな心の寛ぎを感じて、無言のまま、叮嚀にその会釈を返しながら、そっと子爵の側へ歩を移した。
明子は
かすかながら血の色が、頬に上つて来るのを意識した。