それを忠実に勤めて来た母親の、家職のためにあの無性格にまで晒されてしまった
便りない様子、能の小面のように白さと鼠色の陰影だけの顔。
善悪の相は、私たちの心に内在する朧げなる善悪の感じを
便りに、様々の運命に試みられつつ、人生の体験の中に自己を深めて行く道すがら、少しづつ理解せられるのである。
彼女はあの賑やかな家や朋輩たちの顔を思い出すと、遠い他国へ流れて来た彼女自身の
便りなさが、一層心に沁みるような気がした。
尾生は水の中に立ったまま、まだ一縷の望を
便りに、何度も橋の空へ眼をやった。
私は雨に濡れながら、覚束ない車夫の提灯の明りを
便りにその標札の下にある呼鈴の釦を押しました。
爪のない猫! こんな、
便りない、哀れな心持のものがあろうか! 空想を失ってしまった詩人、早発性痴呆に陥った天才にも似ている!
賃銭の廉きがゆえに、旅客はおおかた人力車を捨ててこれに
便りぬ。
あの続きを揃へようとせばライプチヒに註文して貰へばいい、日本にゐる童子は、学校でも遊び友だちは殆どないといふ妻からの
便りがあつた。
筏などは昼に比較して却って夜の方が流すに
便りが可いから、これも随分下りて来る。
ついて間もなく会社との関係を絶ったのですから、遠い外国で
便り少い独りぽっちとなって一時は随分困ったろうと思われます。