百合と薔薇との
彼方には、爪立つて歩む子供の姿さへ隠れんばかりに、羊歯が深く茂つてゐる。
そして
彼方此方と揺曳して、其意志の命ずるまゝに、われとわが姿を変へるのである。
そしてその木立の
彼方には、疑いもなく箱根山の一団がうねうねと横たわっていた。
その炎天の下を、ここから四、五町ばかり
彼方にある街道を朝から、織田勢が幾人も幾人も続いて通る。
草がくれの径遠く、小川流るる谷間の畦道を、菅笠冠りたる婦人の、跣足にて鋤をば肩にし、小さき女の児の手をひきて
彼方にゆく背姿ありしが、それも杉の樹立に入りたり。
彼方此方と搜す中、漸とのことで大きな無花果の樹蔭に臥こんで居るのを見つけ出し、親父は恭々しく近寄つて丁寧にお辭儀をして言ふのには
彼は狭い村を
彼方に一休み此方に一休みして、なるべく時間のかゝる様にして周った。
が、宿りつゝ、其處に虎杖の里を
彼方に視て、心も足も運べない時の儚さには尚ほ堪へられまい、と思ひなやんで居ますうちに——