やがてむらむらと立昇る白い煙が、妙に透通って、
颯と屋根へ掛る中を、汽車は音もしないように静に動き出す、と漆のごとき真暗な谷底へ、轟と谺する……
と※すと、ずらりと車座が残らず顔を見た時、燈の色が
颯と白く、雪が降込んだように俊吉の目に映った。
四月の末だというのに、湿気を含んだ夜風が、さらさらと辻惑いに吹迷って、卯の花を乱すばかり、
颯と、その看板の面を渡った。
今しがた一時、大路が霞に包まれたようになって、洋傘はびしょびしょする……番傘には雫もしないで、俥の母衣は照々と艶を持つほど、
颯と一雨掛った後で。
その窓を見向いた片頬に、
颯と砂埃を捲く影がさして、雑所は眉を顰めた。
紅の括紐、襷か何ぞ、間に合わせに、ト風入れに掲げたのが、横に流れて、地が縮緬の媚かしく、朧に
颯と紅梅の友染を捌いたような。
ここに一樹、思うままの松の枝ぶりが、飛石に影を沈めて、
颯と渡る風に静寂な水の響を流す。
ツツと笊の目へ嘴を入れたり、
颯と引いて横に飛んだり、飛びながら上へ舞立ったり。
楕圓形の葉は、羽状複葉と云ふのが眞蒼に上から可愛い花をはら/\と包んで、鷺が緑なす蓑を被いで、彳みつゝ、
颯と開いて、雙方から翼を交した、比翼連理の風情がある。
兩側に大藪があるから、俗に暗がり坂と稱へる位、竹の葉の空を鎖して眞暗な中から、烏瓜の花が一面に、白い星のやうな瓣を吐いて、東雲の色が
颯と射す。