が、その数多い御逸事の中でも、今では御家の重宝になつて居ります地獄変の屏風の由来程、
恐ろしい話はございますまい。
ああ、しかし、そんな内気な臆病者こそ、
恐ろしい犯罪者になれるのだった。
母屋と、仲間部屋とは、遠く隔っているので、主従の
恐ろしい格闘は、母屋に住んでいる女中以外、まだだれにも知られなかったらしい。
「お嬢さん! あなたは犬殺しを御存じですか? それは
恐ろしいやつですよ。
が、その數多い御逸事の中でも、今では御家の重寳になつて居ります地獄變の屏風の由來程、
恐ろしい話はございますまい。
わたしたちに最も
恐ろしい事実はわたしたちのついにわたしたちを超えられないということである。
そして外面的にはずいぶん冷淡に見える場合がないではなかったが、内部には
恐ろしい熱情をもった男であった。
これは顔でも同じ事で、下顎骨の張つた頬のあたりや、稍大きい口の周囲に、旺盛な動物的精力が、
恐ろしい閃きを見せてゐる事は、殆壮年の昔と変りがない。
肉の眼で
恐ろしい夢でも見るように、産婦はかっと瞼を開いて、あてどもなく一所を睨みながら、苦しげというより、恐ろしげに顔をゆがめた。
眼のなくなった眼窩はいかにも
恐ろしい様子をしてはいたが、もう痛みは少しもないようだった。