いととほき花桐の
香のそことなくおとづれくるをいかにせましや
翅も脚もことごとく、
香の高い花粉にまぶされながら、…………
しかしこれさへ、座敷の中のうすら寒い沈黙に抑へられて、枕頭の
香のかすかな匂を、擾す程の声も立てない。
その頸には白い汗衫の襟が、かすかに
香を焚きしめた、菜の花色の水干の襟と、細い一線を画いてゐる。
今度は石を錦に裹んで藏に納め容易には外に出さず、時々出して賞で樂む時は先づ
香を燒て室を清める程にして居た。
僕は徳二郎の後について田甫に出で、稻の
香高き畔路を走つて川の堤に出た。
その
香をかぐと、ともするとまだ外国にいるのではないかと思われるような旅心が一気にくだけて、自分はもう確かに日本の土の上にいるのだという事がしっかり思わされた。
そこまで来ると干魚をやく
香がかすかに彼れの鼻をうったと思った。