すばらしい展覧会を見てその会場を通りぬけたもののやうに長時間その文学の中に浸つてゐた私が、或るときその中を
通り抜けたきりもう一度その中にはいらうとしなかつた。
こんなのを
通り抜けて出ることが出来れば、反物を景物に出すなどが大いに流行ったもので、怪談師の眼吉などいうのが最も名高かった。
無事に裏木戸まで
通り抜けたものには、景品として浴衣地一反をくれるとか、手拭二本をくれるとか云うことになっているので、慾が手伝ってはいる者も少なくないんです」
そのくせ親しさは日常、一日に必ず一度は四丁目の頭から一丁目の尻尾まで
通り抜けずにゐなかつた、足音や話声の高く特殊に響く路地裏。
そういった途端、うしろからボソボソ尾行て来た健坊がいきなり駈けだして、安子の傍を見向きもせずに
通り抜け、物凄い勢いで去って行った。
お住は仁太郎の棺の前へ一本線香を手向けた時には、兎に角朝比奈の切通しか何かをやつと
通り抜けたやうな気がしてゐた。