しかも今日のような時代となっては、犬は格別、盗賊はからたちのトゲぐらいを
恐れないであろうから、かたがた以てからたちの需用は薄くなったわけである。
こんな風に、泥だらけの道にも文句を云はない女、それは、生活を
恐れない、いゝ道連れだ。
「その指繊長にして、爪は赤銅のごとく、掌は蓮華に似たる」手を挙げて「
恐れるな」と言う意味を示したのである。
きょうは雪もよいの、なんだか忌に底びえのする日であったが、老人はさのみに
恐れないような顔をしていた。
自分は敷島を一本完全に吸つてしまつて、殻も窓からすてた後だつたから、更に
恐れる所なく、ノオトを開いた。
この紛乱した人間の隠遁性と何物をも
恐れない暴逆な復讐心とが、
自分はその人を往く可き處に往かしめるために、之を不愉快にし陰氣にすることを
恐れない。
慣れたものには時刻といい、所柄といい熊の襲来を
恐れる理由があった。
それゆえ少しも魔物を
恐れない、——たとえ化け狐であれ、化け狸であれ、その外何の化けであれ。