父は財産全部を忰の前に投げ出して、自分は思い切りよく
隠居してしまった。
女
隠居は離れへ来る度に(清太郎は離れに床に就いていた。
隠居は房さんと云って、一昨年、本卦返りをした老人である。
家族は主人の次兵衛が四十一歳、女房のお琴が三十七歳、娘のお袖が十八歳で、
隠居夫婦は二十年前に相前後して世を去った。
わたくしが世話になっている家でも
隠居の年寄りと子供を川越へ預けるというので、その荷物の宰領や何かで一緒に行ったことがあります。
隠居じみたそのかっこうは、いったいなんのざまですかよ! だから、ついくやしくなって、けさ早くふらふらと江戸見物にいったんですよ」
別に、崖の中途に小屋を建てて、鉱泉に老を養おうとする
隠居さん夫婦もあった。
その内に
隠居の老人は、或旱りの烈しい夏、脳溢血の為に頓死した。
だから役をひいた時、知人やら親族の者が、
隠居仕事を勧め、中には先方にほぼ交渉をつけて物にして来てまで勧めたが、ことごとく以上の理由で拒絶してしまったのである。