愛する男にすら
許さぬという処女の純潔も、より高い生き方のために何人もの男に
許すという純潔も、純潔に変りはない。
国民が自分の思想を自由に選び、政党を批判し、審判することを
許さぬような暴力的な主義というものは、自由人と共存しうるものではない。
僕自身を冷静に見ることは、——いや、僕は他見を
許さぬ日記をつけてゐる時さへ、必ず第三者を予想した虚栄心を抱かずにはゐられぬものである。
もし多少の誇張を
許すなら、己の袈裟に対する愛なるものも、実はこの欲望を美しくした、感傷的な心もちに過ぎなかった。
恍洋たるロマンチシズムの世界には、何人も、強制を布くことを
許さぬ。
僕は誰に何といはれても、方解石のやうにはつきりした、曖昧を
許さぬ文章を書きたい。
——では何処へ行かう? 東京に居るのは厭だ、温泉か海水浴か、それは経済が
許さぬ。
分析的なものとして論じられている精神の諸作用は、実は、ほとんど分析を
許さぬものなのである。
そしていずれにせよ、私はいかなる場合にも、彼の「よきサマリヤ人」のよき意志を共存者に対して失うことを自らに
許さぬであろう。
その小さいのはちょっと草の葉を択んで食ったが、親兎は
許さぬらしく、往々口を突き出して横合いから奪い取り、自分も決して食わない。